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ほんとうに「がん」に効くのか?

ビタミンの第一発見者は日本人だった

このビタミンの発見には、私たち日本人としては、たいへん残念なエピソードがある。それは、ビタミンのほんとうの第一発見者は、日本の化学者・鈴木梅太郎(一八七四~一九四三年)博士だったということである。

一九一〇年、東京帝国大学の農科大学(現在の農学部)教授だった鈴木は、脚気に効く物質を米ぬかから取り出すことに成功した。この物質をアベリ酸(のちにオリザニンと改名)と名づけ、同年一二月一三日、東京化学会の例会で口頭発表した。そして翌年二月、日本語で論文を発表した。

ほんとうならば画期的な発見であった。脚気の原因がわかったのであるから、鈴木の研究成果は学問分野だけでなく社会的にも大きなインパクトがあって当然であった。ところが、この当時の日本の医学界は、脚気は伝染病と誤って考えており、鈴木のアベリ酸は学界から完全に無視されてしまったのである。そして、その年、フンクがまったく同じ物質の存在を発表し、ビタミンと名づけたのである。

こうして、鈴木梅太郎はビタミンの第一発見者としての名誉を逃してしまった。鈴木が歴史に名前を刻むチャンスを逃した大きな理由は、論文が日本語で書かれていたということであった。

最近の研究では、ビタミンの超能力がますます明らかになってきて、まさに救世主的な存在となっているが、私たちがどこまでビタミンの真実の姿を理解しているのかというと、かなり疑問だ。

まるでビタミンを万病に効く、「元気の素」のようにもてはやしているが、じつは、度を超したビタミンの摂取は、逆に健康を損ねる結果となる。要は、。風説”に踊らされることなく、正しい化学的知識をもつことが大切なのである。
ところで、私たちの最大の関心事は「ビタミンはほんとうにがんに効くのか」ということだと思う。がんに効くという科学的根拠は実際にあるのだろうか? これはまず、なぜ人はがんにかかるのかを考えてみるとわかりやすい。

遺伝子であるDNA(デオキシリボ核酸)にダメージを与える物質は、どんなものであろうと「発がん性」がある。このような性質をもつものを「発がん性物質」と呼ぶが、発がん性物質はどのようにしてDNAにダメージを与えるのだろうか。

DNAは外側がマイナスに帯電している。これがポイントだ。このためマイナスに帯電している物質が近づいても、お互いに反発しあう。反対に、プラスに帯電した物質は、DNAにやすやすと接近できる。もちろん、プラスに帯電した物質は接近するばかりか、DNAに衝突してダメージを与える。

つまり、発がん性物質は電気的にプラスになっているか、これに近い状態のものである。とすれば、発がん性物質にマイナスに帯電している電子を与えれば、プラスの帯電はなくなり、DNAと化学反応しなくなるわけだ。

相手に電子を与える性格をもつ物質は「抗酸化物質」と呼ばれるが、ビタミンA、C、E、β‐カロチン(カロテン)、フラボノイド(緑茶や柑橘類などに含まれる植物色素)などがある。
こういうわけで、ビタミンががんの発生を抑えると期待されているのである。