ビタミンの秘密

病気にかかる人、かからない人

それは、どうして病気にかかる人とかからない人が出てくるのか、ということである。

その差は、ひと口に免疫力の差といってしまえば、それまでである。しかし、ではなぜ、そのような差が生まれてくるのだろうか。

「食事」「睡眠」「運動」「飲酒・喫煙」など、免疫力の差を生み出す要因にはさまざまなものが考えられる。そのなかでも、とくに重要なのは、「その人が何を食べてきたか、何を食べているか」ではないか。つまり、どのような「栄養素」を摂っているかということが、がんや感染症になるか、ならないかを決める分かれ目に思えてならないのだ。

古代ギリシアでは、とり目の患者の目にレバー・エキスを目薬のように注ぐことで、大きな治療効果を上げていたという。大昔から「栄養素の力」が人を病気から守ってきたわけだ。

ひるがえって現代は、錠剤をはじめ、ビスケットータイプやドリンク剤といった「サプリメント」が人気商品となり、輸入野菜や品種改良による新顔野菜などもあらわれ、栄養豊富
な食材も増えている。そして「ビタミン」「ミネラル」「ファイバー」といった栄養素のもつ驚異の力についてもかなり明らかになってきた。いまこそ、栄養素についてあらためて考え直してみるべきときなのだ。

私は、かつて総コレステロール値が三〇〇を超えていたが、みずから「ビタミン」「ミネラル」「ファイバー」を研究し、実際の食事に取り入れ、時には不足ぎみの栄養素をサプリメントで補うようになってから、たいへん体調がよい。まさに「バランスの取れた栄養素に勝る良薬なし!」である。

では、どんな栄養素を摂取すれば、栄養バランスが取れるのか。このための最低限の知識を読者に提供するのが、本書の目的である。

まず、序章では、いま、なぜ、新しい栄養学が求められているのかを述べる。つぎに第一章では、がんから、抗老化、子宝、美容までに効く「元気の素」ビタミンの秘密を紹介する。そして第二章では、ビタミンに負けず劣らず重要なミネラルが生体でどうはたらいているかを明らかにする。たとえば、亜鉛不足では、傷も治りにくいし、精力も衰える。カリウム不足だと高血圧になる。鉄不足でイライラする。第三章では、生化学の進歩によって発見された、私たちを健康に導く「新栄養素群」の顔ぶれを紹介する。最後に第四章では、症状別にどんな栄養素を摂ればいいのかを述べる。

人体は、脳を含め、私たちが毎日、食べた食物からできている。だから、正しい食物を摂れば、免疫力が高まり、薬など飲まなくとも、健康を満喫できる。

ほんとうに摂りたい栄養素を知った読者が、その知識を活用し、健康体質づくりの一助となれば、著者としてこれ以上の喜びはない。

現代人が陥っている栄養難

ショッピングセンターに行けば、カニ、エビ、マクロ、サザエ、霜降りの牛肉など高級食材がずらりと並び、街を歩けば、エスニックーレストランで世界各国の料理が食べられる。テレビでは、料理バラエテイ番組が高視聴率を誇っている。食に関していえば、いまの日本は、まさに、わが世の春である。しかし、そんな飽食の国が、食生活において大きな危機を迎えているといったら、驚かれるだろうか。たしかに、第二次大戦の直後のような食物の絶対量が不足するといった”食糧難”は存在しない。だが一方で、グルメになった現代の日本人は、栄養のバランスを著しく欠いた。栄養難”に陥っているのである。これが脅しでないことは、一九五〇年代から最近までの日本人の死因の変化が証明している。ストレプトマイシンやカナマイシンといった強力な抗生物質の発明や衛生環境の向上などの理由によって、かつて「死の宣告」であった結核での死者は激減した。しかし、それにとってかわったのが、がん、心臓病、脳卒中である。この三つの病気だけで、何と日本人の死因の六割を占めているのだ。

とくに、がんと心臓病の死亡率の上昇には、目を見張るものがある。厚生労働省(厚労省)の人口動態調査によると、二〇〇四年、日本でがんによる死者は三二万三五八人で、死亡総数の三一%を占めた。何と三割以上の人ががんで倒れているのだ。がんは遺伝子の病気であることはよく知られているが、食生活はがんを発生させたり、抑えたりする大きな要因なのである。なぜならば、体内で発生したがん細胞を殺したり、がん細胞の増殖を抑えたりする「免疫」というシステムは、栄養のバランスが崩れることで、かんたんに弱まってしまうからである。免疫だけでなく、食べ物そのものが直接影響することもある。たとえば、胃がんの減少は、日本人が以前ほどしょっぱいものを食べなくなってきたことが大きな理由だし、逆に、肝臓がんや大腸がんの増加は、肉やハムなど脂肪分の多い食べ物を摂るようになってきた食生活の変化に原因があるからだ。また、心臓病についていえば、とりわけ問題になっているのは、狭心症や心筋梗塞である。狭心症はコレステロールの蓄積によって動脈がせばまり、心臓に酸素が十分に届かない状態で、胸が痛くなる。一方の心筋梗塞は、動脈に血液の塊である血栓ができて心臓への酸素の供給がすっかり遮られた状態で、胸に激痛をともなう。

どちらも。動脈硬化”によって心臓に酸素が十分に届かないことで発生する病気である。この動脈硬化は、動脈に体内の老廃物やカルシウムがたまり、血管が柔軟性を失って硬くなる病気で、高血圧をともない、血管がもろくなる。この動脈硬化の原因こそが、片寄った食生活なのである。

成人病から。生活習慣病”の時代へ

いわゆる、”おいしいもの”は、どうしても糖類(炭水物)、タンパク質、脂肪(脂質)といったかつて「三大栄養素」と呼ばれたものが多く含まれていて、ビタミン、ミネラル、ファイバー(食物繊維、ダイェッタリー・ファイバー)といった栄養素が不足する傾向にある。なお、人体の脂質の九五%は脂肪であるため、脂質のことを脂肪と表現することが多い。一九九六年から厚労省は、「成人病」という呼称をやめ、「生活習慣病」という新しい用語を導入した。これは、いままで成人病と総称されていた病気が、文字どおり、生活習慣にその原因があると注意を呼びかけ、病気の予防および発症の抑制を促したものだ。四〇歳をすぎたから、成人病の一つや二つはしようがないといった「甘え」は、これからはもう通用しないというわけだ。まさに、この名称変更は、厚労省のファインプレーといえる。一方、老若男女で「サプリメント(栄養補助食品)」が、最近、爆発的な人気となっている。たとえば、日本のサプリメント市場は二〇〇一年には九七〇〇億円であったが、毎年、約一〇〇〇億円の伸びがつづき、二〇〇四年には一兆二八五〇億円に達した。サプリメント”とは、「もし摂取すれば、からだを健康にする作用が科学的に期待できる物質」のことで、ビタミンCやE、カルシウムや鉄といった栄養素が錠剤やカプセルとなったものである。サプリメントの原料は、魚の油や目、ビタミン、カルシウム、高麗人参、キノコ、大豆、海藻類、酵母(イースト)、クロレラ、深海魚などが使われている。その数は、控えめに見積もっても二〇〇〇種類は軽く超えている。サプリメントは、いまや、近所のコンビニェンスーストアやドラッグーストアでも売れに売れている商品なのである。ハンバーガー、ホットドッグ、ピザといったファーストーフードを主食としたり、異常なダイエットを試みる若者たちのことを考えると、サプリメントブームはよい傾向だと思うが、ほんとうに栄養素のことを理解して、正しくサプリメントを利用しているのかというと、いささかあやしい気がする。

ミックスージュースからビタミンCが消えた

正しい知識をもっていないと、せっかく健康に気をつかっていても、何の意味もないという例を一つ紹介しよう。

ビタミンCが豊富なハッサクとビタミンAを多く含むニンジンのミックスジュースを毎朝飲んでいるので、AとCは十分に摂れていると胸を張る人がいた。しかし、その知人は大きな過ちをおかしていることに気づいていない。そのミックスージュースには、ほとんどのビタミンCがなくなっているのである。これは、いったいどうしたCは分解されてしまっているのである。これではせっかくの健康管理が台なしだ。
それでは、ニンジンを含んだ野菜ジュースからビタミンCを摂取できないかというと、そうでもない。アスコルビナーゼは酸に弱いから、酢やレモンを数滴入れておけば、ビタミンCの破壊を防ぐことができるのである。ノーベル賞受賞の化学者ライナスーポーリング博士が「ビタミンC=がん抑制効果説」を唱えた一九七〇年以降、ビタミンーブームが巻き起こった。日本でも広く。ビタミン信仰”が根づいたが、私の知人のケースでもわかるように、ブームだけが一人歩きをし、正しい理解が浸透しているとはいいがたい。というよりも、間違いだらけの栄養知識をもっている人のほうが多いのが現実ことだろうか?

私たちの栄養を管理する「新しい方法」

最近の栄養学の研究では、いろいろなことが明らかになっている。たとえば、食べ物には「栄養補給の機能」だけでなく、「からだの機能を調節する働き」があることがわかった。オリゴ糖やファイバーの整腸作用や、EPA(エイコサペンタエン酸)の心筋梗塞や血栓予防効果などが、これである。 このように、古い栄養学の知識のままで健康を管理している時代は、すでに終わっているのである。最新の栄養学では、ビタミン、ミネラル、ファイバーといった栄養素が、「サプリメント」から簡単に補えるのだ。現代の新しい栄養学を理解し、サプリメントをうまく併用することで、”健康”をマネジメントする時代がきているのである。

 「ビタミン」「ミネラル」「ファイバー」が注目されるわけ

テレビに「水戸黄門」という人気番組がある。天下の副将軍、水戸光圀が家来である助さん、格さんとともに諸国漫遊の旅の先々で、悪人どもを懲らしめるという時代劇である。
この番組の主役はもちろん黄門様。脇役は、黄門様を守る腕っぷしの強い助さんと格さん。そして、庶民をいじめる悪代官がカタキ役といったところだ。私たちの食生活にも、この。配役”がピタリとあてはまる。たとえば、糖類(炭水化物)、タンパク質、脂肪は栄養素のなかでもとくに大切で、かつては「三大栄養素」と呼ばれていた。三大栄養素はエネルギーになるし、からだの建築材料にもなるので、さしずめ、栄養素の主役といったところだ。 対して、主役の演技を引き立てる。脇役”を演じるのはビタミンであり、ファイバーである。また、嫌われものだが、なくては困る「カタキ役」はミネラルである。ビタミンは酵素というタンパク質といっしょになって、糖類・タンパク質・脂肪をからだのなかに取り込ませる働きをする。名脇役であるビタミンのおかげで、三大栄養素は、からだの健康を守る主役を演じきることができるというわけだ。もう一つの脇役はファイバーである。からだのなかで消化されないものだから、かつて、ファイバーは、何の役にも立たない「ジャンク」と思われていた。しかし、いまでは、ファイバーは排便を促し、体内でできた有害物質をすばやく体外に排泄する重要な役割をはたしていることが明らかとなっている。さらに、コレステロール値を下げるという効果も発見され、貴重な脇役をつとめているのである。ファイバーをジャンクと呼ぶなど、とんでもない誤りであった。カタキ役の「ミネラル」は、活性酸素”を分解する役目を担っている。活性酸素というのは、体内で酸素が「興奮」した状態のもので、人類を含めすべての生物にとって猛毒である。この活性酸素を分解し無毒にするのが、SOD(スーパーオキシドーディスミューターゼ)という酵素なのだが、SODの中心にくっついていて、活性酸素を壊しているのが、銅、亜鉛、マンガンといったミネラルなのである。しかし、このミネラルは、やっかいな物質で、たくさん摂ればSODがいっそう元気になるかというと、そうではない。ミネラルが大量に体内に入ると、中毒を引き起こす危険性があるのだ。ミネラルは人が健康に生きるために、ほんの少しだけ必要なものなのである。やはり、カタキ役は少しいればいい。映画では、脇役やカタキ役の活躍によって主役の演技がイキイキしたものになる。人のからだにも同じことがいえる。からだの栄養素も主役、脇役、カタキ役がうまくバランスを取りながら協力しあって働いてこそ、健康なからだを維持できるのである。

「サプリメント」が必要とされる理由

生きているかぎり、健康でいたいと願うのは当たり前のことだ。この願いを妨げる最大の敵は、病気である。とりわけ、がん、心臓病、脳卒中はワースト3で、日本人の。天敵”といえるだろう。厚労省が盛んに提唱しているように、このワースト3の病気は「生活習慣病」と呼ばれ、

こんな人こそ「サプリメント」を利用したい

慌ただしく、高ストレスな社会を健康に生き抜く「知恵」として、。サプリメント”を活用することはよいことだと思う。
では、どんなときに”サプリメント″の効果が期待できるのだろうか?それは、ある栄養素が不足して、特有の症状が出たときである。たとえば、ビタミンCが不足すると、出血、貧血、全身の倦怠感に苦しむ。壊血病”にかかる。ふだんから、野菜や果物を食べていれば問題はないが、糖尿病など、カロリーの摂取を抑えねばならない人は、そうもいかない。ビタミンCを摂らなければならないが、カロリーは摂れないというときに、ビタミンCのサプリメントを飲むことは理にかなっている。なぜならば、野菜や果物とサプリメントではずいぶん姿形は異なるが、その成分であるビタミンCという物質には、まったく変わりがないからだ。また、ビタミンEには老化を抑える力があるから、欠かさずに摂取したいものだ。しかし、小麦の胚芽油やアーモンドのようにビタミンEを大量に含む食品には脂肪分が多いから、カロリーを摂りすぎる心配がある。こういうときは、ビタミンEのサプリメントを利用するのがよい。足りない栄養素は、食べ物から摂り入れてもいいし、サプリメントを摂ることによって補給してもよいのである。

「栄養難民」からの脱出

サプリメントを利用する際に注意しておきたいことがある。それは、サプリメントは食事の代わりに食べるものではないということだ。SF映画の登場人物のように、三食をすべてサプリメントで済ませてしまうのは、現実の食生活ではとても危険なことである。たとえば、サプリメントによってビタミンDを摂りすぎると、下痢や吐き気などの症状をまねくことがある。また、ビタミンAを過剰に摂取すると、不眠症や頭痛に悩むこともあるのだ。サプリメントは、不足した栄養素をからだに補給するのに有効であるが、あくまでも中心は食事であるということを忘れてはならない。要は、どんな食事をつづけたらどのような栄養素が不足するのか、こういう症状はどの栄養素が足りないために起きるのかをきちんと理解して、「サプリメント」を利用してほしいということだ。糖類、タンパク質、脂肪の「三大栄養素」。三大栄養素を人体のなかで十分に活用するために欠かせないのが、ビタミンやミネラルといった「副栄養素」。それから、健康増進に役立つ、新しい栄養素が食物中から発見されたり、これまで知られていた栄養素に新しい働きが発見されている。たとえば、ファイバー、ビフィズス菌、カゼインーフォスフォペプチド、アントシアニン、DHA、EPA、水、ビール酵母、エソウコギなどで、これらを”新栄養素”と呼ぶことにする。三大栄養素、副栄養素、新栄養素の働きをスケッチした。三大栄養素は食事から摂取し、副栄養素は食事を中心にサプリメントからも摂取する、そして、これ以外の有用な栄養素である新栄養素は、サプリメントから摂取するのが便利である。現代に生きる私たちにとって、いまそこにある危機は「栄養難」である。「栄養難」と戦うためには、最新の栄養知識を武器に、日常の食事と、サプリメントを強力な味方として上手に活用することだ。それが、「栄養難民」の状態から脱出できる有力な方法なのである。




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